ブラウンナチュラルの焼き菓子はココがすごい!
僕はこの焼き菓子を作るとき、焼き菓子というより、麦の風味を確かめるための装置のようなものを作りたかったのかもしれません。
パンを焼いていた頃から感じていたのは、「甘さ」というのは砂糖だけでなく、小麦そのものの中にも潜んでいるということ。ただ、それは発酵という時間の中に置いてやらないと、決して姿を現さない甘さでした。
この焼き菓子にはすべて、ライ麦酵母を直火で焼き締めた香ばしいフレークと、ルヴァンリキッドで熟成させた小麦生地を焼き上げて砕いたものを混ぜ込んでいます。麦の香りをただの「素材」としてでなく、「味」として立ち上げるための仕掛けです。
バターミルクハニービスケットには、ほんのり酸味のある乳清の香りと、焼き色のついた蜂蜜の焦げ香(メイラード反応由来のfuraneol系香気成分)が重なり、素朴でいて印象的な立ち上がりがあります。
アーモンドプラリネカカオビスケットは、ナッツのロースト感(ピラジン類)とカカオの苦味(テオブロミン)が重層的に絡み合い、焼き菓子ながら一口で余韻が長く続く仕上がりに。
ノワゼットショコラビスケットサンドでは、ヘーゼルナッツの油脂がバターと融合し、脂質の口溶けにまかせて香りが後から追いかけてきます。生地の発酵香とショコラの発香点が近いため、口中で一体感のある香味設計になっています。
メープルウォールナッツには、バターの乳脂肪に絡むメープルの香り(バニリン類)と、ウォールナッツのほろ苦さが加わり、しっかりとした甘さの中に奥行きを与えています。
全粒粉ビスケットはもっともシンプルですが、ライ麦酵母の持つ乳酸発酵香と、全粒粉の粉臭が互いにぶつからず共存することで、驚くほど「麦」を感じられる一品になりました。
どれも派手な甘さや香りではありませんが、「麦ってこんなに味があるんだ」と、そんな発見をしていただけるように設計しています。僕自身が「焼き菓子を作るとはどういうことか」を改めて問い直すつもりで取り組んだ詰め合わせです。口の中で、発酵の記憶と、小麦の静かな甘さを感じていただければ幸いです。

ブラウンナチュラルの焼き菓子は東京工場でも販売しています。
みなさんのお越しをお待ちしています。
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